磁性

ステンレスの分類と磁性

ステンレスは表1に示す4種類に大別されます。
磁性、つまり磁石に付くか付かないかという性質で見ますと、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)は磁石に付く強磁性材料ですが、オーステナイト系は磁石に付かない非磁性材料です。 ただ、少々ややこしいことに、オーステナイト系であっても、加工の仕方やその程度によって磁石に付くようになる性質があります。


非磁性

オーステナイト系ステンレスは、普通の状態(固溶化熱処理状態)では非磁性ですが、変形させた場合に磁石に付くようになることがあります。
これは、金属組織の一部が歪に誘発されて、オーステナイトからマルテンサイトに変態したことが原因です。
鋼種によっては、大きく変形させた加工部でも磁石に付かないままのものもあり、目的によって鋼種を選定することが可能です。

図1は、塑性変形の量と磁性の変化を鋼種間で比較した例です。
もっとも一般的なステンレスのSUS 304(18Cr-8Ni)では、加工量とともに磁石に付き易くなりますが、ニッケル(Ni)の含有量を高めますと同じ加工量では磁石に付く性質が小さくなります。

高強度のNSSC 304Nはさらに非磁性安定性が高く、非磁性高強度材のNSSC 130Mでは、変形加工を加えても磁性は変化せず、安定した非磁性を示します。

NSSCの非磁性高強度ステンレス NSSC 130M、NSSC 130Sは液体ヘリウムの極低温(4.2K=約-269℃)でも安定した非磁性を保持していますので(図2)、 粒子加速器の超伝導マグネット用カラー材として、素粒子物理学研究の分野でもお役にたっています。


強磁性

マルテンサイト系やフェライト系のステンレスは磁石に付く性質を持っています。 一昔前には、「磁石に付くステンレスはさびやすい」とか「低級品」という風に言われた時代がありました。しかしながら、磁石に付く付かないということと、耐食性とには直接の関係はありません。

最近では、都市の高層住宅を始めとしてオール電化が進み、IH(誘導加熱ヒーター)が広く普及していますし、電気炊飯器は、急速加熱や弱火炊きといったきめ細かな出力制御ができるIH式が既に一般的になっています。 IH用の鍋には、透磁率が高い(つまり、磁石に付く)材料が適しています。

一方、異物混入が絶対に許されない分野では、磁石を利用して異物検査を行う場合があり、このため、異物の発生源にもなってしまう怖れのある設備機器には耐食性とともに、磁石に付く性質が求められます。

これらは、磁石に付く性質を利用したステンレスの使い方です。
左図にいくつかの代用的な素材の比透磁率を比較して示します。